医療法人は『業務を行うのに必要な資産』を有していなければなりません。
この『業務を行うのに必要な資産』とは、病院、診療所または老人保健施設を開設するのに必要な土地、建物等の不動産及び医療法の規定によって備え付けるべき施設並びにその他の診療に必要な医療機械器具等を含むものとされています。
『業務を行うのに必要な資産』は、その資産の総額の100分の20に相当する金額以上の自己資本という条件はなくなりましたが、それでも医療法人を運営する上で必要な土地、建物等の不動産及び医療法の規定によって備え付けるべき施設並びにその他の診療に必要な医療機械器具等が備わっていることを要求されます。
基本財産
基本財産とは、原則として売却など処分したり、または担保とすることができない財産のことを言います。
ただし、特別な理由のある場合には、理事会及び社員総会の議決を経て、売却など処分したり、または担保とすることができます。
診療所の土地や建物を売却するということは考えられませんが、借入れのために担保として提供することはあり得ることだと思います。
つまり、これらの不動産を基本財産としてしまうと借入れをするときなどに一定の手続を経なければなりません。
診療所の土地や建物などは医療法人にとって重要な財産ですから、基本財産とすることが望ましいのですが、基本財産にしなければならないということはなく、行政側も強制できません。
この基本財産については、将来的な医療法人の運営に影響してきますから、よく考えてから決めていただくことをおすすめします。
個人事業の借入金
土地と建物の購入資金についての借入金は、土地と建物を新たに設立する医療法人に出資をすれば引き継ぐことができますし、医療機器等も出資をすれば、それにかかった購入資金についての借入金も引き継ぐことができます。
この場合、『負債残高証明及び債務引継承認願』を作成し、借入先に押印してもらう必要があります。この『負債残高証明及び債務引継承認願』の添付書類として、金銭消費貸借契約書と返済計画表、借入残高の明細書などが必要です。
ただし、運転資金としての借入金は、原則として新たに設立する医療法人に引き継ぐことはできません。これは出資財産の取得のための借入金ではないため、引き継ぐことができません。
よって、この運転資金の借入金に関しては、個人で返済していくことになります。
医療機器がリースの場合
個人診療所の医療機器がすべてリースの場合でも、新たに医療法人を設立してから『業務を行うのに必要な資産』を有しているか否かは必ずチェックされます。
リースの場合は、その医療機器を出資をすることはできません。
しかし、その場合でも、リースを引き継ぐことはできますから、『リース引継承認書』を作成し、リース会社に押印してもらうことで、新たに設立する医療法人に引き継ぐことができます。